ことさらのおもひ深雪に年立ちて
年立てり病の床を敷き更ふる
新春やまた新しく遺言書
派手を身につけず来し年重ねけり
歳々の輪飾いよいよ余生なり
ねこ舌のおくるる箸や小豆粥
初釜や傘寿の衿を純白に
片手袋失ひしより春めくや
早春の門すこし濡れあさの雨
白魚や厨あづかることは幸
雪解けの音になじみて菜を洗ふ
ある時はものおもふまじと麦を踏む
もとめずも心足らひぬ雛の市
老いてこそなほなつかしや雛飾る
暮てゆく畦火の色をもどり見む
子を失ひし母われけふを実朝忌
木瓜は蕾こぞりてあれば鋭さよ
初蛙ひるよりは夜があた ゝかき
通夜の座のうしろにをれば遠蛙
寝られねば寝ることを捨てぬ遠蛙
家づとにせむも惜しくて初わらび
冗費とも当然とも初わらび買ふ
はりつけにあらず寝釈迦は寝給へり
ほぐれては花かとまぶし檪の芽
代田成り懸境なる灯をうつす