和歌と俳句

及川 貞

しぐるゝや牡蠣割る辻も灯りぬ

麦を播く父子に杜は日を支ふ

蔦紅葉燃えしと思ふ焚火かな

月が照る家路は畦もおち葉かな

しぐれきて縫ひの急く手を火にかざす

冬の日をまぶたに砂湯空を羞づ

冬の海倦みし砂湯の目に白く

温泉けむりの丘べの苺冬を咲けり

暁寒み子を守るこゝろ電車待つ

息白く未知の校門子はゆけり

枯芝に母ら言無き時を経つ

春近き空にサイレン事終へぬ

朝ごこちみだすものなく落葉焚く

ひと日晴れけふはしぐれぬ毛糸編み

冬ばらにひとりの昼餉月曜日

月寒し白き道鋭き坂となり

すそ山も雪なる不二を駅に見つ

寒きびし学生駅へ群よぎり

やちまたの吹雪を言ふ子夜の紅茶

真澄むそら大路の雪はまだ全く