しぐるゝや牡蠣割る辻も灯りぬ
麦を播く父子に杜は日を支ふ
蔦紅葉燃えしと思ふ焚火かな
月が照る家路は畦もおち葉かな
しぐれきて縫ひの急く手を火にかざす
冬の日をまぶたに砂湯空を羞づ
冬の海倦みし砂湯の目に白く
温泉けむりの丘べの苺冬を咲けり
暁寒み子を守るこゝろ電車待つ
息白く未知の校門子はゆけり
枯芝に母ら言無き時を経つ
春近き空にサイレン事終へぬ
朝ごこちみだすものなく落葉焚く
ひと日晴れけふはしぐれぬ毛糸編み
冬ばらにひとりの昼餉月曜日
月寒し白き道鋭き坂となり
すそ山も雪なる不二を駅に見つ
寒きびし学生駅へ群よぎり
やちまたの吹雪を言ふ子夜の紅茶
真澄むそら大路の雪はまだ全く