帰り来る子をおもふなどおち葉焚き
毛糸屋にわが好む色ひとも買ひぬ
年ゆく夜並びねる子にわれも寝る
燈火管制月蝕の霜のまどかくす
北斗の柄よる降る木の葉大きかり
夜半のおちば夜明のおちば風邪ごゝち
菊なますかぜの夕餉を床のうへ
暖炉焚き風の戸たてゝ子らを待てり
茶の花に鵯に寸暇のしあはせを
炉開きやつどへる先づは老ひし友
日の出いまだ霜が真白きうす明り
終列車スキーに行く子別れのる
笹鳴きの暫くのとききまりをり
三つ星の上に月ある寒さかな
戦死九月骨いま抱く大火桶
とりに餌を門掃きてさて落葉焚
暮れんとす落葉に追はれ心に追はれ
霜が下り今年こまごまおもひあり
炉開きや漆黒のピアノ次の間に
師走ひと日仔犬もらひて抱きてかへる