沈丁や色をふくみて浅き春
蕗の薹日にけに見ゆるほうけ立ち
春寒や畳の上の椅子机
魚市のあとの芥や東風の浜
夕燕厨煙にひるがへり
白酒や玻璃さかづきの花模様
春泥や本門寺まで通ひ馬車
春の月ふたゝび昏き行手かな
家毎に門橋持てり春の川
埼玉や桑すいすいと春の雨
蒲公英や畦に拾へる古瓦
ひとり来て墓参さみしや雀の子
山水を湛へし槽や落椿
蘆の芽や蛇籠潰えて横たはる
囀や堤の下の梨畠
暮れそめて川波しろき燕かな
本堂に誰も居らざる花御堂
いち早き黄水仙より園の春
古簗に水たうたうと猫柳
春雨や初午よりの古幟
枯蓮に東風の漣かぎりなく
草の門辛夷大樹の下にあり
籠雲雀ひねもす鳴いて草餅屋
春の月寄生木くらき梢かな