和歌と俳句

篠田悌二郎

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暁やうまれてのうすみどり

堰ちかく湛へし水や菖蒲園

花棕梠や昔ながらの大藁家

町中にある牧場や桐の花

十ばかり熟れて今日摘むかな

潮の香や籬々の花葵

かはたれの水ふかくゐる金魚かな

や雨の親竹うちかむり

門川の藻がにほふなり五月雨

大風の葭切鳴くや葭の中

釣堀の垣のさかりかな

春蝉や多摩の横山ふかからず

梅天やしろしろとある梨袋

みづ垣やこぼれて白き柘植の花

芍薬の咲ける井ありて水を乞ふ

梟の声遠かりし端居かな

畦に咲く遅きあやめや田草取

凌霄の花のふふまるかな

門を過ぐおさなき声は蛍狩

晩涼の芭蕉のみどり見て飽かず

畦みちにかはほりの舞ふ祭かな

つむ手籠は蕗の葉もておほふ

たかむらを相へだてたる麦を打つ

麦は黄に春蝉とほし暮れぬべく

初蝉や麦は刈るべく穂に熟れぬ

浦凪げど鵜のゐる巌は波をくだく