和歌と俳句

篠田悌二郎

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池替ふと莟む菖蒲をかたむけぬ

住みなれて魚族しづかに菖蒲たれ

母の日に白きはなさしをとめさび

母の日のあかき花挿し面愁ふ

母の日の母子らにあり苺喰ふ

骨壷の鳴りしにあらず桑の風

ちちははに我家の花のを剪る

夜の電車桑照らしゆき窓すずし

夜の電車蝉のつぶての来るいくつ

手屏風のはなしも窓の風すずし

罌粟燃ゆる遠白波もくもれる日

罌粟あかし漁港三崎へ坂くだる

ほたる籠気やすめ言葉かはしつつ

灯取虫捨てつつもいふことひとつ

うちはなど机辺には置き見るつつゐる

眞菰生ひはやき幟をなびかする

夾竹桃朝はさはあれ虔しき

夾竹桃かかる真昼もひとうまる

紫蘇の香を激すと見れば妻が摘む

花栗や天のどこかにいなびかり

鷺の巣や高く幽かに雛うごく

梅天に蓑毛まぎれず鷺白し

神崎の夜は真闇なる夏祭

死処として一夜を壁にゐたる