池替ふと莟む菖蒲をかたむけぬ
住みなれて魚族しづかに菖蒲たれ
母の日に白きはなさしをとめさび
母の日のあかき花挿し面愁ふ
母の日の母子らにあり苺喰ふ
骨壷の鳴りしにあらず桑の風
ちちははに我家の花の朴を剪る
夜の電車桑照らしゆき窓すずし
夜の電車蝉のつぶての来るいくつ
手屏風のはなしも窓の風すずし
罌粟燃ゆる遠白波もくもれる日
罌粟あかし漁港三崎へ坂くだる
ほたる籠気やすめ言葉かはしつつ
灯取虫捨てつつもいふことひとつ
うちはなど机辺には置き見るつつゐる
眞菰生ひはやき幟をなびかする
夾竹桃朝はさはあれ虔しき
夾竹桃かかる真昼もひとうまる
紫蘇の香を激すと見れば妻が摘む
花栗や天のどこかにいなびかり
鷺の巣や高く幽かに雛うごく
梅天に蓑毛まぎれず鷺白し
神崎の夜は真闇なる夏祭
死処として一夜を壁にゐたる蛾か