吉武月二郎
お降りや松は神代の夜の音
高千穂にお降りの雲かかりけり
借りて来し隣の三味や松の内
太箸や七歳にして家の主
君追うて越せぬ大井や絵双六
元日やこともなげなる筆硯
そこばくの銭に楪売られけり
手毬もつてかなしきときも遊ぶかな
餅花に灯繞る夜の静寂かな
元日の地を威して玉霰
妻やがて面白くなる手毬かな
弓始め雪の大阿蘇真向に
阿蘇の上に日月のりぬ弓始
太箸やおぼつかなくも左利き
我が病知らず来つれぬ屠蘇の客
お住持の目を通したる年賀かな
若水や映るものみな雪景色
正月を惜しみてかすむ旅人かな
正月の花屑かかる籬かな
ふるさとの子等に銭やる年賀かな
玄海の潮路の雲に初明り