和歌と俳句

年賀 年始 御慶

三条のはしを越えたる御慶かな 許六

から鮭のゑぞは古手で御慶哉 許六

長松が親の名で来る御慶哉 野坡

御年始の返事をするや二階から 一茶

画暦の判じくらする礼者かな 一茶

かつしかや川むかふから御慶いふ 一茶

梅提げて新年の御慶申しけり 子規

年禮や故人わび住む小石川 虚子

年禮やいたく老ぬる人の褄 虚子

年禮の城をめぐりて暮れにけり 虚子

御慶申す手にいたいたし按摩膏 鬼城

年賀客謡の中へ通しけり 喜舟

礼者西門に入る主人東籬に在り 虚子

山里へはるばるありし賀客かな 淡路女

はるばると慕ひ来りし賀客かな たかし

年礼や心おぼえの古きみち 淡路女

ふるさとの子等に銭やる年賀かな 月二郎

よく笑ふ女禮者や草の庵 虚子

多聞寺の屋根の狸に御慶かな 喜舟

茶の花の畑の日向や年始客 石鼎

深川のたかばしとほき年賀かな 万太郎

風邪ひきの遅き年賀の落ちあふも 悌二郎

慇懃にいと古風なる礼者かな 虚子

賑やかに御慶を受くる日なりけり 石鼎

芋坂の団子下げたる賀客かな 万太郎

各々の年を取りたる年賀かな 虚子

年賀受け年賀状受け籠りをり たかし

例の如く草田男年賀二日夜 虚子

猫と居る庭あたたかし賀客来る たかし

明神のあまざけ下げて年賀かな 万太郎

三ヶ日わざとよけたる年賀かな 万太郎

ひそと来てひそと去りたる礼者かな 万太郎

年々の酔ひどれ礼者待つほどに 万太郎

たそがれの雪の礼者となりにけり 万太郎

約束の時間正しく賀客来る 立子

御慶述べ思ひ出したること伝へ 立子

鎌倉の松の緑に賀客かな 立子

賀客来て猪の振舞かたりけり 秋櫻子

年始客降りて泊舟ゆらゆらす 静塔