和歌と俳句

初芝居 二の替

吸がらも明所なし初芝居  来山

花につらしつりがね三重初芝居 北枝

さそはれし妻を遣りけり二の替 子規

初曾我や団十菊五左団小団 子規

初芝居見て来て曠著いまだ脱がず 子規

病人のある気がかりや初芝居 虚子

幌に降る雪明るけれ二の替 みどり女

幌の中に見る小鏡や初芝居 みどり女

茶屋へゆくわたりの雪や初芝居 万太郎

国許の母が来てゐて二の替 風生

腕きゝの若手揃ひの二の替 風生

牡丹雪小やみもなくて初芝居 秋櫻子

隠居名の白猿襲ぎぬ二の替 喜舟

南北の又棺桶や二の替 喜舟

二の替世は心中のはやりかな 喜舟

うたはれし名妓老けたり二の替 みどり女

せりあげのなりものゝいま初芝居 万太郎

初芝居のびし初日のあきにけり 万太郎

初芝居、雪、舞台にもふりにけり 万太郎

あの役者この役者なし初芝居 万太郎

年々歳々花相似たり初芝居 万太郎

歳々年々人同じからず初芝居 万太郎

アヴエマリア鐘鳴りいづる初芝居 秋櫻子

座の紋の梅も匂ふや初芝居 秋櫻子明治座

柝の入りてひきしまる灯や初芝居 秋櫻子

劇半ば披露のことや初芝居 秋櫻子

膝に落つ撒手拭や初芝居 秋櫻子

幕あけは春日の社頭初芝居 風生

打出しの獅子のきほひや初芝居 秋櫻子

撒手拭得たりと受けて初芝居 秋櫻子

初芝居絶えし荒事よみがへり 秋櫻子