和歌と俳句

節分

節分やよい巫女誉る神楽堂 召波

節分をともし立てたり獨住 召波


節分の高張立ちぬ大鳥居 石鼎

節分や八百八町月の辻 喜舟

節分やきのふの雨の水たまり 万太郎

節分の町へさしたる窓あかり 夜半

節分の豆をだまつてたべて居る 放哉

さそはれてまゐる節分の月がまうへに 山頭火

節分の長い石段をいつしよにのぼる 山頭火

節分やざくざくと踏む夜の雪 石鼎

節分の夜の瞳にたかし嶺の星 石鼎

節分や豆腐を買へる厨口 石鼎

節分の熱き炬燵に宿直す 蕪城

節分や鬼もくすしも草の戸に 虚子

送らるる節分の夜のよき車 立子

節分や寒気の熊と温気の象 不死男

かきくもりけり節分の櫟原 波郷

柊挿す

柊さす果しや外の浜びさし 蕪村

柊を挿す母によりそひにけり 虚子

柊をさすや灯の漏る戸袋に 泊雲

凍雪を踏んで柊挿しにけり 素十

柊をさしたるままに這入りけり 夜半

柊を挿すあしもとの灯影かな 草城

柊の葉のさはりつつ挿しにけり 夜半

柊を挿す一事のみ残りたる 泊雲

真青な柊挿せる軒端かな 青邨

柊を挿すひびも古り軒柱 青邨

木場の音止めて柊挿しにけり 青畝

ひとの来て柊挿して呉れにけり 波郷

豆撒き

豆をうつ声のうちなる笑かな 其角

鬼の豆貴妃が頭痛もなかりけり 涼菟

白秋
貧しけば 豆なとまかめ 襷かけて さびしき妻や 鬼は外と云ふ

白秋
やらはれて 逃げゆく鬼の うしろかげ 鐘馗が睨む ふりのをかしさ

豆を撒く父の猫背を夢に見て 鴻村

広前ににほひたてたり年の豆 青畝

灯の宮の春日明神年の豆 青畝

こだまする後山の雪に豆を撒く 蛇笏

豆撒く声おこるわが家に灯ともせば 不死男

吉田屋の畳にふみぬ年の豆 虚子

須弥壇の三宝にあり年の豆 虚子

一百に足らず目出度し年の豆 虚子

豆まきや役者のうちの昔ぶり 秀山(初代 中村吉右衛門)

豆撒けば楽世家めく患者等よ 波郷

豆撒きの今宵うるめる灯と思ふ 波郷

病みて噛めば大き音して年の豆 波郷

荒原や飯場の声が豆を打つ 不死男

桃晃の豆に鬼ども逃げ失せし みどり女

棕櫚の葉の夕べはしづか豆を撒く みどり女

病個室豆を撒けどもひとりなり 波郷

年の豆仰臥の足の方に降りぬ 波郷

病室に豆撒きて妻帰りけり 波郷

豆撒きし枕べのまま寝ぬるべし 爽雨

年の豆奪衣婆わらひゐる堂に 青畝

病む妻の裾に豆撒く四粒ほど 不死男

福は内

わがこゑののこれる耳や福は内 蛇笏

鬼は外主なかなか帰宅せず 青畝