和歌と俳句

西山泊雲

何時よりの纜ずれや枯柳

橋立の根にかたまりて茶屋小春

橋立をたてに雲ゆく時雨かな

柊をさすや灯の漏る戸袋に

煤掃酒庫の神棚忘れじな

もと唄につゞくくだかけ寒造

酒庫口のはき替草履寒造

猪威す夜番の順の早も来し

水仙のたれ葉一片凍土に

目やにつけけうとき顔や冬の鹿

藤の根に伏して色なし冬の鹿

橋立や海へしづるゝ松の雪

冬山の扉の裾に伏す宮津かな

柊を挿す一事のみ残りたる

探梅や日当る岩にもたれもし

見て居れば石が千鳥となりてとぶ

たどたどと籬に沿ひて冬の蝶

水底や落葉動かすものゝあり

何処やらにせゝらぎの音雪の原

雀罠つくるいとまや寒造

時雨るゝやちぎれちぎれの大江山

東京へ行きも帰へりも嵯峨は雪

さゝやかな煙出しありの屋根

自動車の光さしこむ冬木立