和歌と俳句

千載集 匡房
高砂の尾上の鐘の音すなりあかつきかけて霜やおくらむ

千載集 基俊
楸生ふる小野の浅茅におく霜の白きをみれば夜やふけぬらむ

源顕仲
下冴ゆる 草の枕の ひとり寝に 霜のうはぎを たれか重ねむ

源師頼
いつしかと 朝戸おしあけて 見渡せば みちしば白く 置ける霜かな

金葉集・冬 皇后宮權大夫師時
神まつる御室の山に霜ふればゆふしでかけぬ榊葉ぞなき

祐子内親王家紀伊
おく霜は しのびのつまに あらねども あしたわびしく きえかへるかな

京極関白家肥後
たまほこの あさゆくみちの をざさはら わくるもすそに さえにけり

俊恵
白菊を なれいろいろに 染めおきて 今朝など霜の おき隠すらむ

西行
難波江の 入江の蘆に 霜さえて 浦風寒き 朝ぼらけかな

西行
玉掛けし 花の姿も おとろへて 霜をいただく 女郎花かな

式子内親王
淋しさは宿のならひを木の葉しく霜のうへにも詠めつるかな

新古今集 慈円
もみぢ葉はおのが染めたる色ぞかしとそげに置ける今朝の霜かな

千載集 定家
冬きてはひと夜ふた夜を玉ざさの葉分けの霜のところせきまで

定家
散りのこる草葉もかはる朝霜の秋のかたみはおかぬなりけり

定家
さびしさは霜こそ雪にまさりけれ峯のこずゑのあけぼのの空

定家
葉がへせぬ竹さへ色の見えぬまで夜ごとに霜をおきわたすらむ

定家
おきそめてをしみし菊の色を又かへすもつらき冬の霜かな

定家霜のうへの 朝けのけぶり たえだえに さびしさなびく をちこちのやど

定家夢路まで 人めはかれぬ 草の原 おきあかすに むすぼほれつつ

定家
冬はまだあさはの野邊におく霜の雪よりふかきしののめの道

定家
庭の松 まがきの竹に 置く霜の 下あらはなる 千代の色かな

定家
朝霜の 色にへだつる 思ひ草 きえずはうとし 武蔵野の原

定家
浅茅生や のこる葉末の 冬の霜 おきどころなく 吹く嵐かな

定家
神垣や 松につれなき 夜の霜 かはらぬ色よ おき明かせども

定家
いく世までなれてふりぬる川竹のまた下かげに霜ぞおきそふ

続後撰集 後一条院御時 権大納言長家
色さむみ 枝にも葉にも 霜ふりて ありあけの月を てらす白菊

続後撰集 藤原経平朝臣
あさぢふの 下葉も今は うらがれて 夜な夜ないたく さゆる霜かな

続後撰集 真昭法師
消ぬがうへに かさねて霜や おく山の 夕日がくれの 谷の下草