和歌と俳句

短日 日短か

漱石
柿落ちてうたた短かき日となりぬ

碧梧桐
短日やさそはれ出しかげ詣り

放哉
短日や已に灯して寄席のあり

碧梧桐
牛羊の牧短日の歩みかな

鬼城
短日や樫木原の葱畑

万太郎
短日や摺師は知らぬ絵の心

万太郎
短日やけふの案内の泉岳寺

万太郎
短日やのれんのそとの店の音

万太郎
短日や永代橋の帆前船

赤彦
短か日の 川原をいそぐ 乏しらの 水のあよみよ 寒けかりけり

短日のはや秋津嶋灯しけり 蛇笏

短日の時計の午後のふり子かな 蛇笏

短日の磯を汚しし烏賊の墨 石鼎

塵取も夕日の中や日短き 禅寺洞

赤彦
寂しくて布団の上ゆ仰ぎ見る短日の陽は傾きにけり

万太郎
短日や麻布二の橋三の橋

短日の日色に月をかゝげけり 石鼎

短日の梢微塵にくれにけり 石鼎

短日の月をかゝげし山家かな 石鼎

短日の水汲みに出ぬま一桶 石鼎

草城
短日の大いなる樹を斫り倒す

短日や或時ふとき我心 石鼎

短日やいつまで澄みてくるる空 石鼎

短日や味噌漬三ひら進じそろ 龍之介

万太郎
短日や塗りあがりたる壁の色

万太郎
短日のみすみす無理な話かな

花蓑
短日や月光り出で豆腐売

風生
短日の街はや夜や退庁す

万太郎
短日やすでに灯りし園の中

茅舎
短日の照し終せず真紅ゐ

短日やはだかり陰る嵐山 花蓑