和歌と俳句

小春 小六月

芭蕉
月の鏡小春にみるや目正月

鬼貫
夕陽や流石に寒し小六月

鬼貫
ささ栗の柴にからるる小春哉

千代女
似た事の三つ四つはなし小六月

也有
張物に蝿の小紋や小六月

也有
鶯の其手はくわぬ小春かな

蕪村
小春凪真帆も七合五勺かな

暁台
海の音一日遠き小春哉

一茶
米俵手玉にとるや小六月

一茶
さをしかのしの字に寝たる小春哉

一茶
針事や椽の小春を追歩き

一茶
小座敷の丁ど半分小春哉

子規
小烏の鳶なぶりゐる小春哉

子規
小春日や浅間の煙ゆれ上る

子規
凩をぬけ出て山の小春かな

子規
不二を背に筑波見下す小春哉

子規
小春日や又この背戸も爺と婆

子規
屋の棟に鳩のならびし小春哉

病む人の病む人をとふ小春哉

漱石
草山の重なり合へる小春哉

漱石
病む人に鳥鳴き立る小春哉

漱石
橋立の一筋長き小春かな

漱石
武蔵下総山なき国の小春哉

漱石
女の子発句を習ふ小春哉

漱石
山路来て馬やり過す小春哉

子規
売り出しの旗や小春の広小路

子規
畑の木に鳥籠かけし小春哉

子規
のびのびし帰り詣でや小六月

子規
色さめし造り花売る小春かな

碧梧桐
品川の海静かなる小春かな

碧梧桐
山中の積木に休む小春かな

碧梧桐
畚の中雀来て居る小春かな

碧梧桐
小春日の里にお助け普請かな

碧梧桐
日の出見て山下りし里の小春かな

碧梧桐
要害の城や小春の旧山河

碧梧桐
埋れ木を掘る里人の小春かな

碧梧桐
日頃通ふ駄馬米を積む小春かな

碧梧桐
佐渡でいふ国中平小春かな

虚子
落葉焚いて小春の日和定まりぬ

鬼城
小春日や烏つないで飼へる家

鬼城
小春日に七面鳥の闊歩かな

浦人に袈裟掛け松の小春かな 蛇笏

針売も善光寺みちの小春かな 蛇笏