和歌と俳句

網代

人麻呂
もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波のゆくへ知らずも


うちわたし待つ網代木にいとひをのたえてよらぬはなぞやこころぞ

兼盛
深山にはあらしやいたく吹きぬらん網代もたわにもみぢつもれり

経信
月清みせぜの網代による氷魚は玉藻にさゆる氷なりけり

藤原定頼
朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれわたる瀬々の網代木

俊頼
日をも夜を 過ぎがたしとや 思ふらむ いしらの瀬にも 網代うつなり

俊頼
束の間に つもる網代の 木の葉にて 日を経てよらむ 程を知るかな

俊頼
網代木の いかちもすまに よるひをば かきやる方も なき身なりけり

俊頼
みとせまで 人もすさへぬ 錦木と 見れば網代の 木の葉なりけり

俊頼
網代には 月の光も あるものを なにますらをの 篝焚くらむ

俊頼
みやまには 嵐ふくらし 網代木に かきあへぬまで 紅葉つもれり

俊成
身を寄せむかたこそなけれ宇治川の網代をみてや日を送らまし

慈円
網代きにいざよふ浪のおとふけてひとりや寝ぬる宇治の橋姫

定家
夕ぐれは網代にかかる氷魚ゆゑに人も立ちよる宇治のかは波

定家
いかがする枕も床もこほりにて月もり明す瀬々の網代木

定家
あじろぎや浪のよるよるてる月におつる木の葉の數もかくれず

瓜小屋も夢なし網代守る男  言水

網代守大根盗をとがめけり  其角

しづかさを数珠もおもはず網代守  丈草

初雪を背中に負ふや網代守  許六

灯の影の畳みせばや網代小屋  土芳

仲綱が宇治の網代と打詠  北枝

頼政の忌日もしらで網代守  也有

網代木のそろはぬかげを月夜かな  白雄

獺に飯とられたる網代かな  太祇

三ケ月と肩を並てあじろ守  一茶

静なる殺生なるらし網代守  漱石

くさめして風引きつらん網代守  漱石

焚火して居眠りけりな網代守  漱石

網代持てば鴨も時折拾ひ来て  碧梧桐

網代木にさざ波見ゆる月夜かな  虚子

宇治山に残る紅葉や網代もる  虚子