木の葉のみ降りしく秋は道をなみ渡りぞわぶる山川のそこ
今朝見ればうつろひにけり女郎花われにまかせて秋ははやゆけ
ひをさむみ氷もとけぬ池なれやうへはつれなく深きわが恋
とへといひし人はありやと雪わけてたづねきつるぞ三輪の山もと
いづこともいさや白なみ立ちぬれば下なる草にかける蜘蛛の囲
寝るごとに衣をかへす冬の夜の夢にだにやは君が見えこぬ
うちわたし待つ網代木にいとひをのたえてよらぬはなぞやこころぞ
へみゆみの春にもあらで散る花は雪かと山に入る人にとへ
炭がまの燃えこそまされ冬さむみ一人おきひの夜はいも寝ず
ゑこひする君がはしたか霜枯れの野にな放ちそはやく手にすゑ
夕さればいとどわびしきおほゐかは篝火なれや消えかへりもゆ
忘れずもおもほゆるかな朝な朝なしか黒髪の寝くたれのたわ
ささがにのいをだにやすく寝ぬころは夢にも君に逢ひ見ぬが憂さ
るり草の葉におく露の玉をさへ物おもふときは涙とぞみる
思ひをも恋をもせじの祓へすとひとかたならではてはてはしお
吹く風につけても人を思ふかな天つ空にもありやとぞおもふ
瀬は淵に五月雨川のなりゆけばみをさへ海に思ひこそませ
吉野川そこの岩波いはでのみくるしや人をたちゐこふるよ
えもいはで恋ひのみまさる我が身かないつとやいはに生ふる松が枝
残りなくおつる涙は露けきをいづら結びし草村のしの
えもせかぬ涙の川のはてはてやしひてこひしき山はつくはえ
をぐら山おぼつかなくも逢ひ見ぬか鳴く鹿ばかり恋ひしきものを
泣きたむる涙は袖にみつしほのひるまにだにも逢ひ見てしがな
れふしにもあらぬわれこそ逢ふことをともしのまつのもえこがれぬれ
居てもこひ臥してもこふるかひもなくかげあさましく見ゆる山のゐ