春きぬと 人こそいはめ いつのまに けさ鶯の やどにつくらむ
鶯は 春となけども なよたけの 枝にも葉にも 雪はふりつつ
山里は たなゐの氷 とけゆくに 春きにけりと くみてしるかな
いつしかと あさひのかげの しるきかな のどけかるべき 千代の初春
新古今集・春
春といへば 霞にけりな 昨日まで 波間に見えし 淡路島山
春のくる ところはわかじ ものゆゑに あしたの原の まづ霞むらむ
春はけさ 越えぬとおもふに あふさかの 関のすぎむら なほ霞むらむ
うちたたき 春やきぬらむ 昆陽の池の 氷のとざし はやあけてけり
うぐひすの 初音はやがて 春なれば おいもなれをや しるべにはする
雪のうちに 春くる年と うぐひすも かぞへけりとは 今朝ぞ知りぬる
いつのまに けさひきかへて 難波潟 いまは春べと 霞みこむらむ
年のうちに 咲きにし梅に けふよりぞ おのが春とも 告げよ鶯
春きぬと 今朝つげわたる うぐひすは 涙ののこほり まづやとけぬる
月よめば こころのうちに 立つ春を いかで霞の 空にしるらむ
きのふ見し こずゑの雪も うぐひすの なくにしあれば 花かとぞみる
わがそのの 若菜をしめて みやこ人 いくらの春を つまむとすらむ
君がため 子の日の松を ひきつれて ちよをてごとに をさめつるかな
外山には かすみしにけり いづかたか わがしめし野の 荻の焼け原
春霞 すゑのはらのを こめつれば あさるきぎすの こゑのみぞする
なみこしに みつつこぎゆく あはの島 小松がくれは かすみへだてつ