古今集・春
鶯の谷よりいづるこゑなくは春くることをたれか知らまし
古今集・夏
やどりせし花橘も枯れなくになど郭公こゑたえぬらん
古今集・秋・小倉百人一首
月みればちゞにものこそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど
古今集・秋
うゑし時花まちどほにありしきくうつろふ秋にあはむとや見し
古今集・物名
のちまきのおくれて生ふる苗なれどあだにはならぬたのみとぞきく
古今集・恋
ねに泣きてひちにしかども春雨にぬれにし袖と問はば答へむ
古今集・恋
けさはしもおきけん方も知らざりつ思ひいづるぞ消えて悲しき
古今集・哀傷歌
もみぢ葉を風にまかせて見るよりもはかなきものは命なりけり
古今集・雑躰俳諧歌
白雪のともに我が身はふりぬれど心は消えぬものにぞありける
後撰集・秋
露わけし袂ほす間もなき物をなど秋風のまだき吹くらん
後撰集・雑歌
流れての世をもたのまず水のうへのあわにきえぬるうき身とおもへば
山たかみたちくる霧にむすればや鳴く鶯の声のまれなる
鶯のなきつる声にさそはれて花のもとにぞわれはきにける
しづかなる時をもとめていづくにか花のあたりをともにたづねむ
花をのみをりくるからに散りまがふにほひあかずもおもほゆるかな
神さびてふりにし里に住む人はみやこににほふ花をだに見ず
今ははやかへりきなまし道なれど花を見しまに年ぞへにける
木つたふに緑の糸はよわければ鶯とむるちからだになし
花の枝をたづねこしまに春をまた深さ浅さも知られざりけり
はかなくて空なる風の年を経て春ふきをくることぞあやしき
あたたけき春の山辺に花のみぞところもわかず咲きわたりける