心ざし深きみぎはのあやめ草ちとせのさつきいつか刈るべき
しらなみの知らぬ身なれど大淀のおほせことをばいかがそむかむ
梅つ香はこのくれよりぞ流れけるうれしき瀬々は見えむ水底
あらさじとうちかへすらし小山田の苗代水にぬれてつくるあ
めも春に雪間もあをくなりにけり今こそ野辺の若菜つみてめ
千草にもほころぶ花のにしきかないづら青柳ぬひし糸すぢ
ほのぼのと明石の濱を見わたせば春のなみわけ出づる舟の帆
しづくさへ梅の花かさしるきかな雨にぬれじときてや隠れし
そこ寒み結びし氷うち解けて今やゆくらむ春のたのみぞ
らにも枯れ菊も枯れにし冬の野のもえにけるかな佐保山のはら
山も野も夏草しげくなりにけりなどかまたしき宿の刈萱
待つ人も見えぬは夏も白雪やなほふりしける越の白山
かたこひに身をやきつつも夏虫のあはれわびしき物を思ふか
はつかにも思ひかけては木綿たすき賀茂の川浪たちよらしやは
みをつめば物おもふらしほとときす鳴きのみまどふ五月雨の闇
ねを深みまたあらはれぬあやめ草ひとの恋路にえこそはなれね
誰により祈るせせにもあらなくに浅くいひなせ大幣にはた
庭みればやほたで老ひて枯れにけりからくしてだに君がとはぬに
くれたけの夜寒にいまはなりぬとやかりそめふしに衣かたしく
最上川いなふねのみはかよはずておりのぼりなほさわぐあしかも
きのふこそ行きてみぬほどいつのまにうつろひぬらむ野辺の秋萩
竜胆も名のみなりけり秋の野の千里の花の香にはおとれり
結びおきて白露をみるものならは夜ひかるてふ玉もなにせむ
ろもかぢも舟もかよはぬ天の川たなばたわたるほどやいくひろ