和歌と俳句

源順

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

心ざし深きみぎはのあやめ草ちとせのさつきいつか刈るべき

しらなみの知らぬ身なれど大淀のおほせことをばいかがそむかむ

つ香はこのくれよりぞ流れけるうれしき瀬々は見えむ水底

あらさじとうちかへすらし小山田の苗代水にぬれてつくるあ

めも春に雪間もあをくなりにけり今こそ野辺の若菜つみてめ

筑波山さけるのにほひをば入りてをらねとよそながら見つ

千草にもほころぶ花のにしきかないづら青柳ぬひし糸すぢ

ほのぼのと明石の濱を見わたせば春のなみわけ出づる舟の帆

しづくさへ梅の花かさしるきかな雨にぬれじときてや隠れし

そこ寒み結びし氷うち解けて今やゆくらむ春のたのみぞ

らにも枯れ菊も枯れにし冬の野のもえにけるかな佐保山のはら

山も野も夏草しげくなりにけりなどかまたしき宿の刈萱

待つ人も見えぬは夏も白雪やなほふりしける越の白山

かたこひに身をやきつつも夏虫のあはれわびしき物を思ふか

はつかにも思ひかけては木綿たすき賀茂の川浪たちよらしやは

みをつめば物おもふらしほとときす鳴きのみまどふ五月雨の闇

ねを深みまたあらはれぬあやめ草ひとの恋路にえこそはなれね

誰により祈るせせにもあらなくに浅くいひなせ大幣にはた

庭みればやほたで老ひて枯れにけりからくしてだに君がとはぬに

くれたけの夜寒にいまはなりぬとやかりそめふしに衣かたしく

最上川いなふねのみはかよはずておりのぼりなほさわぐあしかも

きのふこそ行きてみぬほどいつのまにうつろひぬらむ野辺の秋萩

竜胆も名のみなりけり秋の野の千里の花の香にはおとれり

結びおきて白露をみるものならは夜ひかるてふ玉もなにせむ

ろもかぢも舟もかよはぬ天の川たなばたわたるほどやいくひろ