千載集・恋
思ひ寝の夢になぐさむ恋なれば逢はねど暮の空ぞ待たるる
千載集・雑歌
憂しとても厭ひもはてぬ世の中をなかなか何に思ひ知りけん
千載集・釈経
むなしきも色なるものと悟れとや春のみ空のみどりなるらん
新古今集・秋
わすれじな難波の秋の夜半の空こと浦にすむ月はみるとも
新古今集・冬
吹きはらふ嵐の後の高嶺より木の葉くもらで月や出づらむ
新古今集・羈旅
知らざりし八十瀬の波を分け過ぎてかたしくものは伊勢の濱荻
新古今集・羈旅
都をば天つ空とも聞かざりき何ながむらむ雲のはたてを
新古今集・羈旅
おぼつかな都にすまぬ都鳥こととふ人にいかがこたへし
新古今集・恋
忘れじの言の葉いかになりにけむたのめしくれは秋風ぞ吹く
新古今集・雑歌
夜もすがら浦こぐ舟はあともなし月ぞのこれる志賀の辛崎
新古今集・雑歌
山里は世の憂きよりも住みわびぬことのほかなる峯の嵐に
新古今集・雑歌
なにとなく聞けばなみだぞこぼれぬる苔の袂に通ふ松風
新勅撰集・春
はるのよの おぼろ月夜や これならむ かすみにくもる ありあけのそら
新勅撰集・秋
まくずはら うらみぬそでの うへまでも つゆおきそむる あきはきにけり
新勅撰集・冬
ふゆの夜は あまぎるゆきに そらさえて くものなみぢに こほる月かげ
新勅撰集・恋
そでのうへの なみだぞいまは つらからぬ ひとにしらるる はじめとおもへば
新勅撰集・恋
いはぬまは こころひとつに さわがれて けぶりもなみも むねにこそたて
新勅撰集・恋
みるままに ひとのこころは のきばにて われのみしげる わすれぐさかな
続後撰集・神祇
神代より うゑはしめけむ 住吉の 松は千歳や かぎらざるらむ
続後撰集・羈旅
わかれては いつをまてとか 契るべき ゆくもとまるも さだめなければ