後撰集・恋
東路のさやの中山なかなかにあひ見てのちぞわびしかりける
古今集・恋
つれもなくなりゆく人の言の葉ぞ 秋よりさきのもみぢなりける
古今集・恋
忘れ草かれもやすると つれもなき人の心に霜はおかなむ
いつはとは 時はわかねど 秋の夜ぞ ものおもふころの かぎりなりける
わが恋の 數にしとらば 白妙の 浜の真砂も 尽きぬべらなり
うらむれど 恋ふれどきみが よとともに しらずかほにて つれなかるらむ
思ふとも 恋ふともいかが くもゐより はるけき人の 空にしるらむ
古今集・恋
あはずしてこよひあけなば 春の日の長くや人をつらしと思はむ
古今集・春
ときはなる松のみどりも 春くれば 今ひとしほの色まさりけり
雪ふりて 年のくれぬる 時にこそ つひにもみぢぬ 松もみえけれ
袖ぬれて 別れはすとも から衣 ゆくとないひそ きたりとをみむ
別路は 心もゆかず から衣 きれば涙は さきにたちつつ
そへてやる 扇の風の 心あらば わがおもふ人の 手をな離れそ
古今集・秋
今はとてわかるゝ時は 天の川わたらぬさきに袖ぞひちぬる
古今集・冬・小倉百人一首
山ざとは冬ぞさびしさまさりける 人めの草もかれぬと思へば
けふ人を 恋ふる心は あまのかは 流るる水に おとらざりけり
いかでなほ 笠取山に みをなして 露けき旅に そはむとぞおもふ
笠取の 山とたのみし 君をおきて 涙の雨に 濡れつつぞゆく
君がゆく 方にありてふ 涙川 水はそこにぞ 流るべらなる
秋の野に 宿りはすべし をみなへし なをむつましみ 旅ならなくに