和歌と俳句

藤原顕輔

あさひ山 ふもとの里の 卯の花を さらせる布と 思ひけるかな

おぼつかな 待つ人からか ほととぎす などふたこゑと 来鳴かざるらむ

よろづ代を 経べき淀野の あやめ草 ながきつまとや 君も見るらむ

色ふかく 門田の早苗 なりにけり いそけしつのを ふしもこそたて

わが恋の 心にかなふ ものならば 人のつらさも 恨みざらまし

金葉集
年ごとに かはらぬものは 春霞 たつたの山の けしきなりけり

いかばかり 照る月なれや 真葛はふ 森のしたくさ 数見ゆるまで

かぎりても 君が齢は いはしみづ 流れむ世には 絶えじとぞ思ふ

月影に たづね来たれば ほととぎす なく山の端に 横雲わたる

梓弓 かへる朝の 思ひには ひきくらぶべき ものなかりけり

梓弓 かへる朝の 思ひには 引きくらぶべき ことのなきかな

秋ごとに 誰か染むらむ ぬし知らぬ からくれなゐの ころもでの森

さざなみや ふなきの山の ほととぎす 声をほにあげて なきわたるなり

知るらめや いはかげに生ふる 白菅の ね深く思ふ 心ありとは

恋すてふ もじの関守 いくたびか われ書きつらん 心づくしに

三笠山 もりくる月の 清ければ 神の心も すみやしぬらむ

逢坂の せきに清水の なかりせば いかでか月の 影をとめまし

夏衣 ひとへに辛き 人こふる わが心こそ うらなかりけれ

よろこびを くはふる旅の から衣 あやしくなどか たちうかるらむ

いつはらで しかとこたへよ 秋萩を しがらみふすと きくはまことか

けふやさは 雪うちとけて うぐひすの みやこに出づる 初音なるらむ

金葉集
今日やさは 雪うちとけて 鶯の 都へいづる 初音なるらん