後拾遺集・春
あさみどりみだれてなびく青柳の色にぞ春の風もみえける
後拾遺集・春
おもひつつ夢にぞ見つる桜花春はねざめのなからましかば
後拾遺集・恋
深山木のこりやしぬらんと思ふ間にいとど思ひの燃えまさるかな
後拾遺集・恋
君こふと且は消えつつ程ふるをかくてもいける身とやみるらん
後拾遺集・恋
恋しさの忘られぬべき物ならば何にかいける身をも恨みん
後拾遺集・雑歌
うきこともまだ白雲の山のはにかかるやつらきこころなるらむ
後拾遺集・雑歌
君をだにうかべてしがな涙川しづむなかにもふちせありやと
詞花集・春
さくら花ちらさでちよも見てしがなあかぬこころはさてもありやと
新古今集・夏
夏草は茂りにけりなたまぼこの道行く人もむすぶばかりに
新古今集・秋
女郎花野辺のふるさとおもひ出でてやどりし虫の声や恋しき
新古今集・恋
霜こほりこころも解けぬ冬の池に夜ふけてぞ鳴くをしの一聲
新古今集・恋
なみだ川身も浮くばかりながるれど消えぬは人のおもひなりけり
新古今集・恋
白玉か露かと問はむ人もがなものおもふ袖をさして答へむ
新古今集・恋
同じくはわが身も露と消えななむ消えなばつらき言の葉も見じ
新古今集・恋
すみよしの恋忘れ草たね絶えてなき世に逢へるわれぞ悲しき
新古今集・恋
世の憂きも人の辛きもしのぶるに恋しきにこそ思ひわびぬれ