和歌と俳句

藤原道信

拾遺集・哀傷
あさかほを何はかなしと思ひけん人をも花はさこそ見るらめ

拾遺集・哀傷
限あればけふぬぎすてつ藤衣はてなき物は涙なりけり

後拾遺集・春
行き帰る旅に年ふるかりがねはいくその春をよそにみるらむ

後拾遺集・別離
別れての四年の春の春ごとに花のみやこを思ひおこせよ

後拾遺集・別離
たれがよもわがよもしらぬ世の中にまつほどいかがあらむとすらむ

後拾遺集・恋
あふみにかありといふなるみくりくる人苦しめのつくま江の沼

後拾遺集・恋
かへるさの道やはかはる変らねど解くるにまどふ今朝の淡雪

後拾遺集・恋小倉百人一首
明けぬれば暮るる物とは知りながら猶恨めしき朝ぼらけかな

後拾遺集・恋
千賀の浦に浪よせかくる心地してひるまなくてもくらしつるかな

後拾遺集・恋
たまさかにゆき逢坂の関守は夜をとほさぬぞ侘しかりける

後拾遺集・恋
年の内に逢はぬためしの名を立ててわれ七夕にいまるべきかな

後拾遺集・恋
つれづれと思へば長き春の日に頼むこととはながめをぞする

後拾遺集・雑歌
天の原はるかに渡る月だにもいづるは人にしらせこそすれ

金葉集・恋詞花集・恋
嬉しきはいかばかりかは思ふらむ憂きは身にしむ物にぞありける

千載集・春
さよふけて風や吹くらん花の香のにほふここちのそらにするかな

千載集・哀傷
くちなしの園にや我が身入りにけむ思ふことをもいはでやみぬる

千載集・哀傷
年をへて君が見なれします鏡むかしのかげはとまらざりけり

千載集・雑歌
妹と寝て起きゆく朝の道よりもなかなか物の思はしきかな

千載集・雑歌
この世には住むべきほどや尽きぬらん世の常ならず物のかなしき

新古今集・春
散り残る花もやあるとうちむれてみ山がくれを尋ねてしがな

新古今集・秋
秋はつるさ夜ふけがたの月みれば袖ものこらず露ぞ置きける

新古今集・冬
小夜ふけて聲さへ寒きあしたづは幾重の霜か置きまさるらむ

新古今集・哀傷
あかざりし花をや春も恋つらむありし昔をおmひ出でつつ

新古今集・哀傷
ほしもあへぬ衣の闇にくらされて月ともいはずまどひぬるかな

新古今集・恋
須磨の蜑の浪かけ衣よそにのみ聞くはわが身になりにけるかな

新古今集・恋
心にもあらぬかが身の行きかへり道の空にて消えぬべきかな

新古今集・恋
あだなりと思ひしかども君よりはもの忘れせぬ袖のうは露

新古今集・雑歌
いにしへの山ゐの衣なかりせば忘らるる身となりやしなまし

新勅撰集・秋
いとどしく ものおもふやどを きりこめて ながむるそらも 見えぬけさかな

新勅撰集・秋
いつとなく ながめはすれど あきの夜の このあかつきは ことにもあるかな

新勅撰集・恋
いつまでと わがよのなかも しらなくに かねてもものを おもはするかな

新勅撰集・恋
としをへて ものおもふひとの からごろも そでやなみだの とまりなるらん

新勅撰集・恋
ものおもふに 月見ることは たえねども ながめてのみも あかしつるかな

新勅撰集・雑歌
くものうへの つるのけごろも ぬぎすてて さはにとしへむ ほどのひさしさ