和歌と俳句

後拾遺和歌集

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和泉式部
黒髪の乱れてしらずうちふせばまづかきやりし人ぞ恋しき

清原元輔
移り香の薄くなりゆく薫物のくゆる思ひに消えぬべきかな

和泉式部
なきながす涙にたへでたえぬればはなだの帯の心地こそすれ

相模
なかたゆるかづらき山の岩ばしはふみみることもかたくぞありける

大貮良基
忘れなんと思ふさへこそ思ふこと叶はぬ身には叶はざりけれ

高橋良成
忘れなんと思ふに濡るる袂かな心ながきは涙なりけり

大納言忠家母
いかばかり覚束なさを歎かましこの世のつねと思ひなさずば

權僧正静圓
あふことのただひたぶるの夢ならばおなじ枕にまたもねなまし

和泉式部
あらざらむこの世のほかのおもひでに今ひとたびの逢ふこともがな

藤原惟規
都にも恋しきことのおほかれば猶このたびはいかんとぞ思ふ

周防内侍
契りしにあらぬつらさも逢ふことの無きにはえこそ恨みざりけれ

西宮前左大臣高明
忘れなんそれも恨みず思ふらん恋ふらんとだに思ひおこせよ

藤原道信朝臣
年の内に逢はぬためしの名を立ててわれ七夕にいまるべきかな

増基法師
七夕をもどかしとのみ我が見しも果ては逢ひ見ぬためしとぞなる

馬内侍
蜘蛛手さへかきたえにけるささがにの命を今は何にかけまし