拾遺集・哀傷
こふつくす みたらし河の かめなれば のりのうききに あはぬなりけり
後拾遺集・春
春はまづ霞にまがふ山里をたちよりてとふ人のなきかな
後拾遺集・別離
行く春とともにたちぬるふな道を祈りかけたる藤なみの花
後拾遺集・哀傷
のりのためつみける花を数々に今はこのよのかたみとぞおもふ
後拾遺集・雑歌
きみすらもまことの道に入りぬなりひとりや長きやみにまどはむ
後拾遺集・雑歌
ひかりいづる葵の影をみてしかば年へにけるもうれしかりけり
後拾遺集・雑歌
みゆきせし賀茂の川波かへるさにたちやよるとてまちあかしつる
後拾遺集・雑歌
神代よりすれる衣といひながら又かさねても珍しきかな
金葉集・雑歌
あみたぶと唱ふる聲に夢さめて西へ流るる月をこそ見れ
千載集・雑歌
逢ひみむと思ひしことをたがふればつらきかたにも定めつるかな
新古今集・釈経
逢ふことをいづくにてとか契るべき憂き身の行かむ方を知らねば
新勅撰集・釈経
世々をへて ときくるのりは おほかれど これぞまことの 心なりける
新勅撰集・釈経
みなひとの ひかりをあふぐ そらのごと のどかにてらせ くもがくれせで
新勅撰集・釈経
まれらなる のりをききつる みちしあれば うきをかぎりと おもひぬるかな
新勅撰集・雑歌
やまざとの はなのにほひの いかなれや かをたづねくる うぐひすのなき
新勅撰集・雑歌
ことのはの はるのしらべに きこゆれば かすみたなびく そらかとぞおもふ
続後撰集・釈経
さやかなる 月の光の てらさずは くらき道にや ひとりゆかまし
続後撰集・釈経
はかなくも たのみけるかな はじめより あるにもあらぬ 世にこそありけれ
続後撰集・釈経
うれしきも つらきもことに わかれぬは 人にしたがふ 心なりけり