和歌と俳句

後拾遺和歌集

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よみ人しらず
多かりし豊の宮人さしわけてしるき日影をあはれとぞみし

藤原長能
ひかげ草かがやく影やまがひけむますみの鏡くもらぬものを

選子内親王
神代よりすれる衣といひながら又かさねても珍しきかな

藤原実方朝臣
あしひきの山井の水は氷れるをいかなる紐のとくるなるらむ

源頼家朝臣
まことにやあまた重ねしをみ衣豊のあかりのかくれなきよに

法眼源賢
思ひきやわがしめゆひし撫子を人のまがきの花とみむとは

平正家
信濃なるその原にこそあらねどもわが帚木と今はたのまむ

源重之
都へといきの松原いきかへり君がちとせにあはむとすらむ

中将尼
そのかみの人は残らじ箱崎の松ばかりこそわれをしるらめ

藤原基房朝臣
こつかみの浦に年へてよる浪もおなじ所にかへるなりけり

連敏法師
老いの波よせじと人はいとふともまつらむものをわかの浦には

源兼長
うちむれし駒もおとせぬ秋の野は草かれゆけど見る人もなし

源兼俊母
にほひきや都の花は東路の東風のかへしの風につけしは

返し 康資王母
吹き返す東風の返しは身にしみき都の花のしるべとおもふに

大貮高遠
とりわきて我が身に露や置きつらむ花よりさきにまづぞうつろふ

藤原実方朝臣
やすらはで思ひたちにし東路にありけるものかはらからの関

藤原実方朝臣
みちのくの安達の真弓君にこそ思ひためたる事はかたらめ

大江匡衡朝臣
都にはたれをか君は思ひいづる都の人はきみをこふめり

返し 藤原実方朝臣
忘られぬ人の中には忘れぬをまつらむ人のなかにまつやは

赤染衛門
ありてやはおとせざるべき津の国の今ぞ生田の杜といひしは