後拾遺集・羈旅
なぬかにもあまりにけりな便りあらばかぞへきかせよ沖の嶋守
後拾遺集・恋
須磨の蜑の浦こぐ船の跡もなく見ぬ人こふる我やなになり
後拾遺集・恋
さりともと思ふ心にひかされて今まで世にもふるわが身かな
後拾遺集・恋
うつつにて夢ばかりなる逢ふ事をうつつばかりの夢になさばや
後拾遺集・恋
忘れなんそれも恨みず思ふらん恋ふらんとだに思ひおこせよ
後拾遺集・恋
うちしのびなくとせしかど君こふる涙はいろにいでにけるかな
後拾遺集・恋
よそにふる人は雨とや思ふらん我が目に近き袖のしづくを
後拾遺集・恋
日にそへて憂きことのみも増るかな暮れてはやがて明けずもあらなん
後拾遺集・恋
契りあらば思ふがごとぞ思はまし怪しや何のむくいなるらん
後拾遺集・恋
けふしなばあすまで物は思はじと思ふにだにもかなはぬぞ憂き