古今集・秋
佐保山の柞の色はうすけれど秋はふかくもなりにけるかな
古今集・秋
もみぢばの流れざりせばたつた川水の秋をばたれか知らまし
古今集・冬
み吉野の山の白雪つもるらし ふるさとさむくなりまさるなり
古今集・冬・小倉百人一首
あさぼらけありあけの月と見るまでに吉野のさとにふれる白雪
古今集・恋
わが恋にくらぶの山のさくら花まなくちるともかずはまさらじ
古今集・恋
あふ事を長柄の橋の長らへて恋ひわたるまに年ぞへにける
古今集・雑歌
かりてほす山田のいねの こきたれてなきこそわたれ 秋のうければ
後撰集・春
深緑常磐の松のかげにゐてうつろふ花をよそにこそ見れ
後撰集・春
桜花今日よく見てむ呉竹の一夜のほどに散りもこそすれ
後撰集・恋
しるしなき思ひやなぞと葦鶴の音になくまでに逢はずわびしき
後撰集・恋
わたの底かづきて知らむ君がため思ふ心の深さくらべに
後撰集・恋
あひ見ては慰むやとぞ思しに名残しもこそ恋しかりけれ
後撰集・雑歌
峰高み行きても見べきもみち葉をわがゐながらもかざしつるかな
拾遺集・春
花の色をうつしとゞめよ鏡山春よりのちの影や見ゆると
拾遺集・恋
逢ひ見てはなぐさむやとぞ思ひしを名残りしもこそ恋ひしかりけれ
新古今集・春
花流す瀬をも見るべき三日月のわれて入りぬる山のをちかた
新古今集・秋
うらがるる浅茅が原のかるかやの乱れて物を思ふころかな
新古今集・冬
影さへに今はと菊のうつろふは波のそこにも霜や置くらむ
新古今集・恋
その原やふせやに生ふる帚木のありとは見えて逢はぬ君かな
新古今集・恋
をじかふす夏野の草の道をなみしげき恋路にまどふころかな
新古今集・恋
霧深き秋の野中のわすれ水たえまがちなる頃にもあるかな
新古今集・恋
枕のみ浮くと思ひしなみだ川いまはわが身の沈むなりけり
新勅撰集・春
きつつのみ なくうぐひすの ふるさとは ちりにしむめの はなにぞありける