古今集・恋 坂上是則
あふ事を長柄の橋の ながらへて恋ひわたるまに 年ぞへにける
古今集・雑歌 よみ人しらず
世の中にふりぬる物は 津の国の長柄の橋とわれとなりけり古今集・雑躰 伊勢
難波なる長柄の橋もつくるなり 今はわが身をなににたとへむ
後撰集・雑歌 七条后
人わたすことだになきをなにしかも長柄の橋と身のなりぬらん
御返し 伊勢
ふるる身は涙の中にみゆればや長柄の橋にあやまたるらん
拾遺集・雑歌 藤原きよただ
あしまより見ゆるながらのはしはしら昔のあとのしるべなりけり
兼盛
わが恋は 長柄の橋の したよりも 告ぐるよなくも なりにけるかな
後拾遺集・賀 兼盛
朽ちもせぬ長柄の橋のはし柱ひさしきことの見えもするかな
信明
心だに ながらのはしは ながらへむ わが身に人は たとへざるべく
後拾遺集・雑歌 公任
橋柱なからましかば流れての名をこそきかめあとをみましや
後拾遺集・雑歌 赤染衛門
わればかり長柄の橋は朽ちにけり難波の事もふるる悲しさ
後拾遺集・雑歌 伊勢大輔
いにしへにふり行く身こそ哀れなれ昔ながらの橋をみるにも
千載集・雑歌 俊頼
ゆくすゑをおもへはかなし津の国の長柄の橋も名はのこりけり
俊頼
きみはしも ききわたりけむ 津の国の 長柄の橋を つくりそめしも
千載集・雑歌 道命法師
なにごともかはりゆくめる世の中にむかしながらの橋柱かな
千載集・雑歌 道因法師
けふ見れば長柄の橋は跡もなしむかしありきと聞きわたれども
新古今集・雑歌 壬生忠岑
年経ればくちこそまされ橋柱むかしながらの名だにかはらで
新古今集・雑歌 恵慶法師
春の日のながらの濱に舟とめていづれか橋と問へど答へぬ
新古今集・雑歌 後徳大寺左大臣実定
朽ちにけるながらの橋を来て見れば葦の枯葉に秋風ぞ吹く
仲実
朽ちにけり これや長柄の 橋柱 あはれ昔の 跡ばかりして
清輔
嘆かじな 長柄の橋の 跡みれば わが身のみやは 世には朽ちぬる
俊成
跡だにも長柄の橋のわたりには枯葉の葦ぞ形見なりける
俊成
何か世をつねならずとは思ふべき長柄の橋も名やは朽ちたる
西行
津の国の長柄の橋のかたもなし名はとどまりて聞わたれども
定家
朽ちぬとも名は埋もれじあぢきなく跡もながらの橋を見るにも
俊成
いひ通ふ道だにたえぬ逢ふことの長柄の橋はさこそ朽ちなめ
定家
さもあらばあれ名のみ長柄の橋柱くちずば今の人もしのばじ
続後撰集・雑歌 律師経円
くちはつる ながらの橋の 跡にきて むかしをとほく こひわたるかな
続後撰集・雑歌 兵部卿有教
ひとりのみ われやふりなむ つのくにの 長柄の橋は 跡もなきよに