和歌と俳句

藤原仲実

長月の ありあけの月の ほのぼのと はねかく鴫の 声きこゆなり

かねてより 千歳はしるし いはねふみ 重なる山の 峰の松原

いにしへの 七の賢き 人も皆 竹をかざして 年ぞ経にける

踏む人も なき庭の面に 秋の夜は 苔莚にぞ 月はやどれる

ふるさとを 忘れず来鳴く まな鶴は むかしの名をも なのりけるかな

夕づく日 さす夕暮れに 見渡せば 雲ぞかかれる を初瀬の山

岩ふるる 水わきかへる みわ川の 清き瀬波の 音のさやけさ

月きよみ あけ野の原の 夕露に ささめ分け来る 衣さ濡れぬ

遠つ道 急ぎて過ぎし 関路には 八声の鳥を 人ぞとなへし

桁朽ちて 苔むしにけり をはた田の いたたの沼に 渡す棚橋

越の海 あゆの風吹く 奈呉の浦に 舟はとどめよ 波枕せむ

いくよ寝ぬ しらたまよする ましららの 浜松が根に 松葉をりしき

とまるべき 道にもあらぬ 別れ路は 慕ふこころや 関となるらむ

真柴刈り 垣根もしめぬ 山里の 葎のかどは 閉ざしやはする

山田守る おしねのひた葉 生へたれど いなおほせ鳥の 来鳴くなるかな

朽ちにけり これや長柄の 橋柱 あはれ昔の 跡ばかりして

夢に見し 人をうつつに 得て後ぞ よもすなほには はやなりにける

世の中は つねにやはある 岩代の 岡辺にたてる 松を見るにも

ひま過ぐる 影よりも疾き かげろふの世を たまきはる 五十路の春に あひにけるかな

伊邪那岐の みことのときに さだめてき わが君ひさに 世にまさむとは