古今集・雑歌 在原行平
こきちらす滝の白玉ひろひおきて 世のうき時の涙にぞかる
古今集・雑歌 業平
ぬき乱る人こそあるらし白玉のまなくもちるか袖のせばきに
金葉集・雑 経信
白雲とよそにみつれどあしびきの山もとどろにおつるたきつせ
経信
雲居よりとどろきおつるたきつせはただ白糸のたえぬなりけり
金葉集・雑 よみ人しらず
天の川これや流れの末ならむ空よりおつる布引の瀧
詞花集・雑 藤原隆季朝臣
くもゐよりつらぬきかくる白玉をたれぬのひきの瀧といひけむ
千載集・雑歌 源顕房
水の色ただ白雲と見ゆるかなたれさらしけむ布引の滝
千載集・雑歌 藤原良清
音にのみ聞きしはことの数ならで名よりも高き布引の滝
俊恵
山桜 咲けるさかりは 峰ごとに 落ちけるものを 布引の滝
新古今集・雑歌 在原行平
わが世をば今日か明日かと待つかひの涙の瀧といづれ高けむ
新古今集・雑歌 二條関白内大臣
みなかみの空に見ゆるは白雲のたつにまがへる布引の瀧
新古今集・雑歌 有家
ひさかたの天つをとめが夏衣雲居にさらす布引の瀧
定家
布引の滝よりほかにぬきみだり間なく玉散るとこのうへかな
定家
秋の月そでになれにしかげながらぬるる顔なるぬのびきの瀧
良経
山人の衣なるらし白妙の月にさらせる布引の瀧
定家
布引の瀧のしらいと夏くればたえずぞ人の山路たづぬる
定家
布引のたきにたもとをあらそひて我が年波のいづれたかけむ
新勅撰集・雑歌 藤原行能朝臣
ぬのびきの たきのしらいと わくらばに とひくるひとも いくよへぬらん
続後撰集・雑歌 後鳥羽院御製
布引の 滝のしら糸 うちはへて たれ山風に かけてほすらん
続後撰集・雑歌 従二位頼氏
天の河 雲のみをより ゆく水の あまりておつる 布引の滝
布引も願ひの糸の數にせむ 子規
冬の滝間髪近き岩濡らさず 静塔
鏡面に冬滝を去る顔残し 静塔