みちのくの末の松山うらうへにこすしらなみはちよの数かも
萬代と八十うぢ人やよばふらむけさ山びこのこたふなるかな
詞花集・賀
住吉のあらひと神の久しさに松のいくたび生いかはるらむ
今よりは声をたづねむ呼子鳥山路にひとりさそらふる身は
かつらぎの山の高嶺にすむ人は谷の底にや雲を見るらん
新古今集・羇旅
夕日さすあさぢがはらの旅人はあはれいづこを宿にかるらむ
住む人もあるかなきかの宿ならしあいまの月のもるにまかせて
嬉しさを思ひをきつつしのぶぐさ忘れぬものを秋の夕露
いにしへの人ならなくに瀧の糸を雲の衣をきても見るかな
金葉集・雑
白雲とよそにみつれどあしびきの山もとどろにおつるたきつせ
雲居よりとどろきおつるたきつせはただ白糸のたえぬなりけり
後拾遺集・雑歌
旅寝する宿はみやまにとぢられてまさきのかづらくる人もなし
難波潟けさふみつくる鳥のあとを波し消たずはしるしとや見む
たれか住む宿のつまともしらなくにはかなくかける細蟹にいと
彦根山あまなきかどとききしより八重の雲居にまどひぬるかな
すむ人もすぎゆくわれも住吉の松のよはひと祈らざらめや
かは船の葦間をわくる楫の音にをしの羽風のたつ声ぞする
金葉集・冬
水鳥のつららの枕ひまもなしむべしみけらし十ふの菅菰
金葉集・冬
旅寝する夜床さえつつ明けぬらしとかたぞ鐘の聲きこゆなり
金葉集・賀
君が代の程をばしらで住吉の松を久しと思ひけるかな
新古今集・羇旅
旅寝してあかつきがたの鹿のねに稲葉おしなみ秋風ぞ吹く
新古今集・羇旅
旅寝する葦のまろやの寒ければつま木こり積む舟急ぐなり
夕されば かど田のいな葉 おとづれて 蘆のまろ屋に 秋風ぞふく
後拾遺集・恋
君がため落つる涙の玉ならば貫きかけてみせましものを