和歌と俳句

金葉和歌集

皇后宮權大夫師時
神まつる御室の山ふればゆふしでかけぬ榊葉ぞなき

康資王母
榊葉や立ちまふ袖の追風になびかぬ神もあらじとぞ思ふ

大納言経信
旅寝する夜床さえつつ明けぬらしとかたぞ鐘の聲きこゆなり

前齋院六條
なかなかに霜のうはぎを重ねてや鴛鴦の毛衣さえまさるらむ

修理大夫顕季
さむしろに思ひこそやれ笹の葉にさゆる霜夜の鴛鴦のひとり寝

曾禰好忠
ふぢふ野に柴刈る民の手もたゆみつかねもあへず冬の寒さに

内大臣有仁
なにとなく年の暮るるは惜しければ花のゆかりに春を待つかな

藤原成通朝臣
人しれず年の暮るるを惜しむ間に春いとふ名の立ちぬべきかな

藤原永実
數ふるに残り少なき身にしあればせめても惜しき年の暮かな

三宮輔仁親王
いかにせむ暮れ行く年をしるべにて身をたづねつつ老は来にけり

中原長国
年暮れぬとばかりをこそ聞かましか我が身の上に積らざりせば