和歌と俳句

芦屋

能因
蘆の屋の 昆陽のわたりに 日は暮れぬ いづち行くらん 駒にまかせて

俊恵
ながめやる 心のはてぞ なかりける 芦屋の沖に 澄める月影

俊成
はるかなる あしやの沖の 浮寝にも 夢路はちかき 都なりけり

西行
波高き 蘆屋の沖を 帰る舟 事無くて世を 過ぎんとぞ思ふ

定家
ほのぼのと わが住む方は きりこめて あしやの里に 秋風ぞふく

良経
漁火の 昔の光 ほの見えて 芦屋の里に 飛ぶかな

定家
葦の屋の かりねの床の ふしのまに 短く明くる 夏のよなよな

定家
あしのやに 蛍やまがふ あまやたく おもひも恋も 夜は燃えつつ

定家
芦の屋の わがすむ方の 遅桜 ほのかにかすむ かへるさの空

実朝
芦の屋の 灘のしほやき われなれや 夜はすがらに くゆりわぶらむ

実朝
いつもかく 寂しきものか 芦の屋に 焚きすさびたる あまの藻塩火

定家
このごろは 南の風に うきみるの よるよるすずし あしの屋の里