和歌山県伊都郡かつらぎ町にある二つの山。紀ノ川の北側が背山、南側が妹山。
阿閉皇女
これやこの大和にしては我が恋ふる紀伊道にありといふ名に負ふ背の山
丹比真人麻呂
栲領布の懸けまく欲しき妹の名をこの背の山に懸けばいかにかあらむ
春日蔵首老
よろしなへ我が背の君が負ひ来にしこの背の山を妹とは呼ばじ
万葉集・巻第四 笠金村
後れ居て恋ひつつあらずは紀伊の国の妹背の山にあらましものを
古集
背の山に直に向へる妹の山事許せやも打橋渡す
古集
人にあらば母が愛子ぞあさもよし紀の川の辺の妹と背の山
古集
我妹子に我が恋ひ行けば羨しくも並び居るかも妹と背の山
古集
妹に恋ひ我が越え行けば背の山の妹に恋ひずてあるが羨しさ
古集
麻衣着ればなつかし紀伊の国の妹背の山に麻蒔く我妹
人麻呂歌集
大汝少御神の作らしし妹背の山を見らくよしも
人麻呂歌集
背の山に黄葉常敷く神岳の山の黄葉は今日か散るらむ
後撰集・秋 宗千
君と我いもせの山も秋くれば色かはりぬる物にぞありける
後撰集・雑歌 よみ人しらず
むつましきいもせの山の中にさへ隔つる雲のはれずもあるかな
好忠
むつまじき妹背の山と知らねばや初秋霧の立ちへだてつる
源氏物語・藤袴
妹背山深き道をば尋ねずてをだえの橋にふみまどひける
源氏物語・藤袴
まどひける道をば知らず妹背山たどたどしくぞたれもふみ見し
俊頼
妹背山 谷ふところに おひたちて きぎのはぐくむ 花をこそみれ
俊頼
いもせ山ほそたに川を帯にしてかすみのころもけさやきるらむ
金葉集・秋 春宮大夫公実
妹背山みねの嵐や寒からむ衣かりがね空に鳴くなり
新勅撰集・雑歌 權中納言国信
あさみどり かすみわたれる たえまより 見れどもあかぬ いもせやまかな
清輔
春来れば 裾野の梅の うつり香に 妹背の山や なき名たつらむ
清輔
いかなれば 妹背の山に すむ鹿の またかさねては 妻をこふらむ
秋櫻子
杉山の妹山芽立つかなしさよ
秋櫻子
杉山の背山は余花を裾にせり