和歌と俳句

田植え

女房のとかくおくれる田植哉 子規

花嫁の笠きて簔きて田植哉 子規

鎌倉は何とうたふか田植哥 子規

陣笠を着た人もある田植哉 子規

そぼふるやあちらこちらの田植歌 子規

湖をめぐりて雨の田植かな 虚子

雨雲の離れぬ比枝や田植時 虚子

植ゑし田の中の巌や忘れ笠 蛇笏

水の邊や恩鍬はづして田植馬 鬼城

小さき子に曳かれていばゆ田植馬 鬼城

田植すみて東海道雨の人馬かな 虚子

憲吉
新みどり 濃き谷底の 一枚田 このゆふかげに 田植ゑゐる見ゆ

児は畦に松明振れる田植かな 泊雲

ぐいと曳けば我田合点や田植牛 泊雲

牛の中に馬一匹の田植かな 泊雲

田植人の一人手挙げぬ誰れか応ふ 橙黄子

田植笠に雪の鳥海浮ぶ日よ 橙黄子

牧水
生垣に 木がくりみゆる 門さきの 田植の人に 雨のふるなり

牧水
雨いよよ ふれば田植うる 人人の 寄りきていこふ わが門の木に

隣田へ蓑たのまれし田植かな 泊雲

杳かなる田植の人の憩ひかな 橙黄子

千樫
うちならび 植うる人らの うしろより さざなみよする 小田のさざ波

かたよりて田歌にすさむ女房かな 蛇笏

田を植うる男許りの山田かな 虚子

降りかくす森見て立ちし田植かな 虚子

戸締りの老おくれ出る田植かな 爽雨

田植笠真菰の風に耐へゐたり 秋櫻子

明るさの田植の足を洗ふなる 素十

田植牛またたきしげく篠の雨 誓子

田植唄きこえてあそぶ寺門かな 月二郎

雨はれや重り合ひて田植笠 泊雲

水中の日に縄を張る田植かな 水巴

渓流の音に雨添ふ田植かな 水巴

田植笠近くかがやき通りけり 石鼎

田を植ゑるしづかな音へ出でにけり 草田男

陸中の田植を見たり帰へらなむ 普羅

若松の芯旺んなる田植かな 石鼎

田植餅どつさりもらひすべもなし 青邨

大雨に鏡もぬれし田植かな 不器男