十ツ分の休みのけなさ蜆蝶
虻生れて晴れて教師も昼餉待つ
入学試験幼き頸の溝ふかく
冨家の子の作文春愁ただ哀れ
人々に四つ角ひろき薄暑かな
たかんなの影は竹より濃かりけり
筍の鋒高し星生る
片虹といふべき虹の久しくも
あらましを閉ざせしのみの夕牡丹
田を植ゑるしづかな音へ出でにけり
涼風のつよければ倚る柱かな
前向ける雀は白し朝ぐもり
夏雲にただ真白な山の池
家を出て手を引かれたる祭かな
宵に睡て又目の醒めし祭かな
負はれたる子供が高し星祭
七夕や男の髪も漆黒に
軒つゞき縁つゞきなり星祭
翡翠の飛ぶこと思ひ出しげなる
はつきりと翡翠色にとびにけり
翡翠の淵掠めしを見下しに
昼顔のまだ小輪の咲き亘る
昼顔や小屋は次第に遠ざかる
あかるさや蝸牛かたくかたくねむる