和歌と俳句

蝸牛 かたつぶり ででむし

一日の旅路しるきや蝸牛 子規

雨水のしのぶつたふやかたつぶり 子規

ちゞまれば廣き天地ぞ蝸牛 子規

蝸牛葉裏に雨の三日ほど 虚子

蝸牛や雨雲さそふ角のさき 子規

蝸牛の妻も籠れり杓の中 虚子

筋違に芭蕉渡るや蝸牛 漱石

でで虫の角ふり立てて井戸の端 漱石

酢桶の乾かで臭し蝸牛 漱石

茨刈る手になつかみそ蝸牛 龍之介

門額の大字に点す蝸牛かな 虚子

主客閑話ででむし竹を上るなり 虚子

朽臼をめぐりめぐるや蝸牛 泊雲

蝸牛に竹に上葉の風雨かな 石鼎

蝸牛や竹の林の相国寺 石鼎

蝸牛や小さき庵にやぶ広し 石鼎

蝸牛這ふ礎ばかり残りけり 喜舟

白秋
蝸牛の角の秀さきの白玉は消なば消ぬべし振りのこまかさ

白秋
上つ葉に ふと角ふれて 蝸牛 驚きにけむ 身ぬちすくめつ

蝸牛や五月をわたるふきの茎 漱石

でで虫の腸さむき月夜かな 石鼎

壁の蓑に梅の翠来て蝸牛 石鼎

見つめ居れば明るうなりぬ蝸牛 石鼎

でで虫の草を這ひ居り壁の下 石鼎

でで虫に昼夜相追ふ日と月と 石鼎

蝸牛の糸ほどのびて角哀れ 石鼎

枯笹と墜ちし蝸牛に水暗し しづの女

萩の葉の小ささまろさ蝸牛 櫻坡子

竃火うつる雨の木屑や蝸牛 泊雲

蝸牛ののびてひるまず風雨かな 泊雲

葉の雫風におくれて蝸牛 石鼎

あほむけに蝸牛這うて蕗の中 石鼎

夕立の奥の枝這ふ蝸牛 石鼎

でで虫の腹やはらかに枝うつり 石鼎

からかさやでで虫の垣すれ出づる 青畝

庭川も濁り膨れて蝸牛 青畝

雨上り蝸牛居並ぶ砌かな 青畝

ででむしや辷りうつりし筧杙 青畝

ででむしの辷りうつりの恐ろしや 青畝

牧水
ぬぎすてし娘が靴にでで蟲の大きなる居り朝つゆの庭に