和歌と俳句

誘蛾灯

立ち寄ればあたり賑はし誘蛾燈 月二郎

誘蛾燈灯し合うたる門田かな 月二郎

誘蛾灯野は六月のその暗さ 悌二郎

通ひ路の夕べ水漬きぬ誘蛾燈 禅寺洞

誘蛾燈とぼしきマッチすりにけり 禅寺洞

夕雨や片すゝけして誘蛾燈 泊雲

蛾落ちてさゞめく水や誘蛾燈 泊雲

蛾這入り大きな陰や誘蛾灯 青畝

さみだれのみづく家路や誘蛾灯 青畝

灯をめぐり灯のまぼろしや誘蛾灯 青畝

轍あと深くかげりぬ誘蛾燈 誓子

鬱々と蛾を獲つつある誘蛾燈 青畝

針金の灼けきはまりつ誘蛾燈 青畝

誘蛾燈しきりに墨を塗りをりぬ 青畝

誘蛾灯もゆる畦木のあひだかな 素十

大いなる誘蛾灯あり試験場 鳳作

誘蛾灯築地のすそに灯りたる 鳳作

誘蛾灯門内深く灯りけり 鳳作

誘蛾燈つらなりもゆる闇は濃く 野風呂

夜をこえし誘蛾燈のみ濤の音 草田男

誘蛾燈畦みなうねり裏日本 草田男

翼あるもの先んじて誘蛾燈 三鬼

誘蛾燈を去りし時間が朝雲に 楸邨

音立てて大蟲小蟲誘蛾燈 立子