和歌と俳句

桑の実

ありきながら桑の実くらふ木曽路哉 子規

茂吉
はるばると 母は戦を 思ひたまふ 桑の木の實の 熟める畑に

茂吉
たらちねの 母の邊にゐて くろぐろと 熟める桑の實を 食ひにけるかな

牧水
泣きながら 桑の実を摘み 食ふべつつ 母を呼ぶ子を 夕畑に見つ

桑の實や二つ三つ食ひて甘かつし 鬼城

牧水
道にたつ 埃を避けて 道ばたの 桑の畑ゆけば 桑の実ぞおほき

牧水
桑の実を 摘みて食べつつ 染まりたる 指さきかはゆ 童さびして

桑の實の葉うらまばらに老樹かな 蛇笏

赤彦
桑のみを 爪だちあがり 我は摘む 幼きときも 斯くのごとせし

赤彦
桑の實を 食めば思ほゆ 山の家の 母なし子にて ありし昔を

木曽川の瀬のきこえ来し桑の実よ 秋櫻子

桑の実や越へ来し山は雲立てり 秋櫻子

桑の実や湖のにほひの真昼時 秋櫻子

桑の実や苅萱堂に遊びけり 茅舎

桑の実や洋傘帯にさし写生する かな女

桑の実や馬車の通ひ路ゆきしかば 不器男

桑の實のしみ新しき桑籠かな 風生

桑の実に唇そめし女房かな 青邨

桑の実に長きも長き峠かな 青畝

桑の実や父を従へ村娘 虚子

桑の實に顔染む女童にくからず 蛇笏

桑の實や奥多摩日々に小雷 蛇笏