和歌と俳句

沖縄

翁逝く終戦の日を前にして

俊成
なかなかにうるまの島の人ならばうきに思ひを変へましものを

琉球もけふを祝ふや菊の酒 許六

迢空
朝やけのあかりしづまり、ほの暗し。夏ぐれけぶる 島の藪原

迢空
藷づるのすがるる砂は けぶりたち、洋の朝風 島を吹き越ゆ

迢空
島の井に 水を載くをとめのころも。その襟細き胸は濡れたり

迢空
鳴く鳥の声 いちじるくかはりたり。沖縄じまに、我は居りと思ふ

迢空
はろばろとなりゆくものか。伊平屋島 後地の山は、前島の空に

迢空
遠ざかり来て、阿旦の藪に降る雨の音を思へり。島は昏れつつ

迢空
波の音暮れて ひそけし。火を消ちて 我はくだれり。百按司の墓

迢空
国頭の山の桜の緋に咲きて、さびしき春も 深みゆくなり

紫の雲の上なる手毬唄 久女

ひとでふみ蟹とたはむれ磯あそび 久女

常夏の碧き潮あびわがそだつ 久女

島の子と花芭蕉の蜜甘き吸ふ 久女

砂糖黍かぢりし頃の童女髪 久女

廻礼も跣足のままや琉球女 鳳作

正月も常のはだしや琉球女 鳳作

春雨傘さして馬上や琉球女 鳳作

大空の春さりにけり椰子の花 鳳作

琉球のいらかは赤し椰子の花 鳳作

椰子の花こぼるる上に伏し祈る 鳳作

よぢのぼる木肌つめたしマンゴ採り 鳳作

梯梧とは血のいろに咲く花と知れ 上村占魚

カラカラは沖縄の酒器年を祝ぐ

琉球王国よりの旧正にぎやかに

釈迢空
沖縄の洋のまぼろし たたかひのなかりし時の 碧のまぼろし

那覇

釈迢空
南の波照間島ゆ 来しと言ふ舟をぞ求む。那覇の港に

釈迢空
那覇の江にはらめき過ぎし 夕立は さびしき舟を まねく濡しぬ

栴檀の花散る那覇へ入学す 久女

青簾つりし電車や那覇の町 鳳作

炎天や水を打たざる那覇の町 鳳作

ハブ壺をさげて従ふ童かな 鳳作

旅は晴梯梧咲きゐしことも幸 上村占魚

赤土に夏草戦闘機の迷彩  沢木欣一

露の地へ五体投地の拝かな  沢木欣一

首里

城内に機音たかき遅日かな 鳳作

バナナ採る梯子かついで園案内 鳳作

雲の峰夜は夜で湧いてをりにけり 鳳作

首里城に桑の実盗りの童あり 鳳作

蛍火や首里王城は滅びたる  沢木欣一

守礼の門

春泥や守礼の門の扉を持たず 青畝

摩文仁

蘂つたひ露の玉落つ仏桑華  沢木欣一

黒揚羽ばかり修羅場の仏桑華  沢木欣一

赤とんぼ算を乱せり死者の丘  沢木欣一

玉砕の岩垣闇や蚊喰鳥  沢木欣一

魂魄の塔にすがりし忍冬花  沢木欣一

海は夏摩文仁の砦ふしあはせ 青畝