和歌と俳句

福岡

福岡や千賀もあら津も雁鱸 去来

ベルが鳴るよう働いた今日のをはりの 山頭火

博多

家並の博多はに海の音 野坡

練酒に養父入せばや菊の宿 支考

初秋の千本の松動きけり 漱石

鯖提げて博多路戻ることもあり しづの女

墓多き博多の町の四月雲 源義

春の雨博多の寿司のくづれをり 源義

日は西に菊売ならぶ博多川 秋櫻子

鯊落ちて柳は青し博多川 秋櫻子

どんたくの仮面はづせし人の老 多佳子

上げ潮も鴎も夏ぞ博多川 汀女

箱崎

後拾遺集・雑歌 中将尼
そのかみの人は残らじ箱崎の松ばかりこそわれをしるらめ

俊頼
箱崎の松はまことの緑にて香椎のかたもつみはきこえず

箱崎や松のふかみも青あらし 涼菟

松原の葛とよまれし住ゐかな 支考

鹹はゆきにぬれたる鳥居哉 漱石

うららかや見えてよりたる唐船碑 禅寺洞

病間や破船に凭れ日向ぼこ 久女

炭つぐや頬笑まれよむ子の手紙 久女

山茶花の紅つきまぜよゐのこ餅 久女

ゐのこ餅博多の仮寝馴れし頃 久女

ゐのこ餅紅濃くつけて鄙びたる 久女

枯野塚

かれの塚もてなせけふのあさ霙 曾良

芝草やまだはつ春のかれ野塚 杉風

香椎

旅人
やすみしし我が大君の食す国は大和もここも同じとぞ思ふ

旅人
いざ子ども香椎の潟に白栲の袖さへ濡れて朝菜摘みてむ

大弐小野老朝臣
時つ風吹くべくなりぬ香椎潟潮干の浦に玉藻刈りてな

豊前守宇努首男人
行き帰り常に我が見し香椎潟明日ゆ後には見むよしもなし

金葉集・雑歌 神主大膳武忠
ちはやふる香椎の宮の杉の葉をふたたびかざす君ぞわが君

新古今集・神祇 よみ人しらず
ちはやぶる香椎の宮の綾杉は神のみそぎに立てるなりけり


秋立つや千早古る世の杉ありて 漱石

春蝉やはるかなりける椎の空 亜浪

椎の露香椎の宮に来りけり 虚子

時雨霽れ香椎の宮で見る帆かな 蛇笏

梟やたけき皇后の夜半の御所 しづの女

鯊釣に荻吹く風や多々良川 秋櫻子

志賀島

有明や志賀はて波戸の花 支考