杉田久女
肥かけて冬菜太るをたのしめり
わが蒔いていつくしみ見る冬菜かな
縫ひ疲れ冬菜の色に慰む目
肥きいて日を吸ひふとる冬菜かな
炭ついで吾子の部屋に語りけり
北斗凍てたり祈りつ急ぐ薬取り
燭とりて菊根の雪をかき取りぬ
御僧に門の雪掻く忌日かな
御僧に蕪汁あつし三回忌
病間や破船に凭れ日向ぼこ
炭つぐや頬笑まれよむ子の手紙
山茶花の紅つきまぜよゐのこ餅
ゐのこ餅博多の仮寝馴れし頃
ゐのこ餅紅濃くつけて鄙びたる
山茶花の簷にも白く散りたまり
冬浜のすす枯れ松を惜みけり
冬凪げる比売宮ふしおがみ
厳寒や夜の間に萎えし卓の花
ほのゆるる閨のとばりは隙間風
たらちねに送る頭巾を縫ひにけり