なく雲雀松風立ちて落ちにけり
行春や水草のみなる池の面
紫雲英咲く小田部に門は立てりけり
来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり
牡丹の芽当麻の塔の影とありぬ
蟇ないて唐招提寺春いづこ
或る門のくづれて居るに馬酔木かな
野茨のはびこり芽ぐむ門を見つ
馬酔木咲く金堂の扉にわが触れぬ
蝌蚪の水わたれば仏居給へり
馬酔木より低き門なり浄瑠璃寺
金色の仏ぞおはす蕨かな
鶯や雨やむまじき旅ごろも
鶯や舟行く淵の底は岩
万葉の古江の春や猫柳
しろじろと遅き梅あり薮の中
草餅や帝釈天へ茶屋櫛比
遊園の春ととのひぬ桜餅
木の芽影みだして水の家鴨の子
廃園の門とし見れば蘆の角
柳鮠蛇籠になづみはじめけり
鮠釣に水草生ひ出て光たれ