冬の梅紺青の斑の鯉澄める
寒鯉を見るやうすうすと群なせる
鯉淡くうすら冬日の影も消ゆ
田にゐたる鴨が初日をよぎり飛ぶ
夜の雪の田をしろくしぬ鴨のこゑ
心足るひと日寒木瓜もさかりなり
道の雪消えて閑庭なほ白し
凍雪を踏みゆき雪舟を見てかへる
無聊の眼寒木瓜にゆけば花紅し
紅梅や佳き墨おろす墨の香と
野の池を十日見ざりき咲く辛夷
炉を塞ぐほとり野雁の羽を置ける
十年見ぬ人来し日より麗らなり
花の雨竹にけぶれば真青なり
花の雨大にふりて屋をおほふ
蕗の葉に谷わたり来し落花あり
藤垂れて朝餉の窓のはしに見ゆ
牡丹見る白髪の人ぞ友なりける
若楓ゆふかぜ池に吹きつのり
若楓葉づたふ雨の瀧なせり
池の雨さむし實梅の枝さしいで
梅の實の朝ぐもりせるはしづかなり
青葉木兎月ありといへる聲の後
芍薬や医をわすれゐる今日の閑