和歌と俳句

室生犀星

新年の山重なりて雪ばかり

新年の山襞に立つ烟かな

元日や山明けかかる雪の中

寒竹や芽の向き初日さしにけり

若水や人の声する垣の闇

お降りや新藁葺ける北の棟

世を侘ぶる屋根はトタンかお降りす

何の菜のつぼみなるらん雑煮汁

鍬はじめ椿を折りてかへりけり

買初の紅鯛吊す炬燵かな

若菜籠ゆきしらじらと畳かな

古き世の顔も匂ふや松の内

くろこげの餅見失ふどんどかな

坂下の屋根明けてゆくどんどかな