松かげや絲萩伏して秋の立つ
犬も曳く粉屋ぐるまや秋暑し
沓かけや秋日にのびる馬の顔
秋の日や埃くもれる古すだれ
月の夜は雑木もさわぐ風ならん
さかさまに葉書かきゐて秋夕
秋もやや土のしめりの夕かけて
秋あはれ山べに人のあと絶ゆる
庭近く机つゆけきいとどかな
馬が虻に乗つて出かける秋の山
秋めくやとんぼうよぎる書庫の間
秋水や蛇籠にふるええびのひげ
とんぼうや羽の紋透いて秋の水
すぎごけで織られてゐるよ秋の水
鯛の骨たたみにひろふ夜寒かな
きりぎりす己が脛喰ふ夜寒かな
しの竹や夜さむに冴ゆる雨戸越し
ひとりねの枕にかよへ秋の風
裏山や枝おろし行く秋の風
朝寒や幹をはなるる竹に皮
菊は白くしぐれ溶けあふ夕厨
石段を叩いてのぼる秋の人
身にしむやほろりとさめし庭の風
茶どころの花つけにけり渡り鳥
行きもどり駅のいとどの絶えにけり