冬に入る手のあれしるき机上
冬に入る椿の葉つやまぶしかも
ひよどりの痩せ眼に立ちて冬日なる
枝に透いて鳥かげ迅き冬日かな
冬日さすあんかうの肌かはきけり
冬雨に炬燵櫓をはたくかな
短日や夕にあらふ昼の椀
短日や小窓に消ゆる魚の串
冬の夜の巷に鶴を飼ひなれし
墨匂ふ漢の山々眠りけり
初冬や庭木に乾く藁の音
冬の苔きばみそめけり水の鉢
石ほとけ寺よりかりて冬の苔
さいかちのこぼれこぼれつ師走かな
師走ひと日時計の埃はきにけり
霜よけの篠吹きとほす師走かな
行年や懐紙をえらぶ市の中
行年や葱青々とうら畠
行年や笹の凍てつく石の水
冬ふかくほとけの彫りも見えがてに
あしの皮はぎおちる冬の深みけり
笹にまじるあやめみどり葉冬深き
冬深き井戸のけむりよ朝まだき
冬深く萎えし花々幾日ぞ
炭の輪の隈とる縞は美しきかな