和歌と俳句

河東碧梧桐

初日さす朱雀通りの静さよ

薮入のさびしく戻る小道かな

元日や寺にはひれば物淋し

上京や万歳はいる寺の門

元日の袴脱ぎ捨て遊びけり

蓬莱や海老かさ高に歯朶隠れ

ほの暗き忍び姿や嫁が君

賣初や多分に切つて尺の物

屠蘇鱈汁数の子の御列かな

四ツ手毬上手にこそはゆりにけれ

薺打ちし俎板に据ゑん盆栽も

元日の屏風隠れに化粧かな

参候す大手の鶏のはじめかな

正月の日記どうしても五行で足るのであつて

つやつやしい鏡餅の粉をはらつてこの手

手ずれな正月は遍路が笠を肱よせ松